2021/02/27
2月8日に2.8独立宣言文 記念フォーラム~2.8独立宣言文の意義とコリアンの未来~を開催しました。
当日は日本、中国、アメリカから参加したスピーカーが、2.8独立宣言文の精神に立ち返り、その現代的な意義と、今後、私たちにできる行動について語りました。
多くの内容の中で、要点を抜粋します。
川崎栄子 AKUJapan代表理事
■2.8独立宣言文について、改めて勉強をした。勉強をしながら、感動の連続だった。運動の理念がその後の3.1独立宣言の背景と、朝鮮半島だけでなく、アジアのその後の活動の基本となり、今日までも流れている。
■3.1運動の先駆けとして、日本にいた朝鮮半島からの留学生11名が独立宣言文を作成、朗読。内9名が逮捕、2名がソウルへ。それが基礎となって、3.1独立宣言文が起草された。
■日本で生まれた在日として、祖国の未来のために、頭を突き合わせて考え、このような宣言文が出たことが嬉しかった。正義と自由を元にした民主主義を成し遂げる、という2.8独立宣言文の内容は、時代は変わっても、正しいことは変わらないということを示している。
■AKUのスローガン”ワンドリーム、ワンコリア、ワンワールド”という理念に通じる、普遍的な理念が100年以上前にすでに存在していた。武力抗争ではなく、独立ののちには一緒に発展していこう、という理論がすでにあった。
■朝鮮半島の南には自由、民主主義が存在しているが、北半分は暗黒の地である。2300万人の国民が何の権利、自由もなく、1日1日を命の危険に怯えながら過ごしている。北朝鮮を民主化し、北朝鮮の人々に、人間の世界の素晴らしさ、統一コリアを作り上げてこそ、私たちの目的が達成される。
■今、世界で一番大きな問題は韓半島の問題。他にも問題はあるが、それはあくまで紛争に過ぎない。冷戦時代の東西陣営の接点として分断され、その後の経過は南北の現実が如実に表している。
朝鮮半島の民主化のためには、朝鮮半島にルーツを持つものだけではなく、世界中の人たちの助けが必要。
2.8宣言の精神は今日まで受け継がれている。21世紀の世界平和は保障されると思っている。
白栒(ペクスン)博士(2.8独立宣言文起草者 白寛洙博士の御子息)
2.8運動が志向したもの
■父親が50歳になった年に私が生まれた。毎年2月8日に座敷に集まり、そこにいた人々と共に食事をしながら、お酒を飲みながら話をしていたことが思い出される。
■日頃考えている2.8運動の基本的特徴、意味などを考えながら102年前あった2.8独立宣言の現代的意味が何かということを今一度考えたい。
■当時、植民支配の相手国の首都である東京で起こったこと、または、主体勢力が若い留学生だったことにも意味があった。
■しかし、それ以外にも内容の特徴が3つある。すなわち、目的、ビジョン、それを成す方法、の3つ。それが現代社会、現代の北東アジア、または世界の情勢にどのような意味があるのか。
■2.8運動の3つの特徴は1.目的においては正義と自由を基調とした民主主義。2.志向するビジョンが世界平和と人類の文化を達成すること。3.それを成す方法が何かというと、「生存のための自由の行為」
■2.8運動の当時の特徴は植民主義と軍国主義に対する民主主義。そのための国際連盟を達成すること。自由行為としての独立運動。この3つの特徴が現代社会、国際社会とかの北東アジアの情勢など、アメリカの状況を見るときとても意味があるそのような内容になるのではないか。
2.8運動の現代的意義
■100年前に比べれば、民主主義が発展したが、世界には民主主義に対する勢力が
いまだに存在する。
■正義と自由を基調とした民主主義を妨害する勢力が大きく分けて2つある。
1つ目は中国共産党、イスラムの原理主義(根本主義)、北朝鮮の主体思想などに代表される、新種の全体主義。2つ目はポストモダニズム、(過激な)反人種差別主義、フェミニズム、無政府主義などに代表される新左派主義がある。
■2.8運動は100年以上前に起こったが、当時に民主主義制度を妨害していた
勢力に対する抵抗として出てきた運動であり、その意味が現代にもあるのではないか。
現在における民主主義を妨害する勢力に対する民主主義の建設に意味があるのでは。
■2つ目のビジョンについて、当時世界万国平和会議とそれを基調とした国際連盟を結成することがビジョンだった。そのような大きなビジョンを持っていた。まさに今、そのような精神が私たちに必要。
■昔に比べて平和が多くなされているとはいえ、まだ不足な状態であり、沈滞している人類の文化を発展させるために、2.8運動が投げかけた精神を用いて、国際連合という国際機構を通して世界平和と人類の文化を前進させることが必要。
■3つ目の「生存のための自由行為」について。自由の行為とは民主主義とか世界平和を成すために必要なある行動をすること。
■自由行為、とは、現代社会における数多くのポピュリズム(自身の個人のある利益のため、また、ある集団の利益のためにデモをする、などの行為)とは違い、世界平和文化、さらに新種の全体主義、新左派主義に対する真なる自由民主主義を守護するため必要な自由の行為である。それが現代にも必要。
■具体的には、1. 自由民主主義のための個人的行動。例えば、北朝鮮の人権問題に対して、米国のオットー・ワームビア氏の両親は、今でも北朝鮮の人権問題に関する自由、個人的行動をしている。2.市民団体による行動。例えば、米国内の北朝鮮人権推進委員会のような運動があり、韓国には脱北者を中心とした人権運動がある。日本でも多くの人権運動がある。
■そのような基本的な民主主義を守るための思想が、世界平和と人類の文化を向上させるためには必要。
まとめ
■2.8運動の現代的な意味。1つ目には、中国共産党や北朝鮮の主体思想、イスラム全体主義思想、または新種左派主義に対抗して真なる自由民主主義を守護するという目的。
■2つ目のビジョン。国連や国際機構を通して、世界平和と人類の文化のために、真なる民主主義を保護していくようビジョンを通して、方向づけをする必要がある。
■3つ目の自由行為。現代においては民主主義を保護し、見い出し、世界平和を誘致し、人類文化を向上させるために、日本や米国や韓国にいる個人主義的、個人的、市民団体的な、国際的な国家的な範囲で自由行為が必要。
日本、アメリカ、中国より3人のコリアンの青年の発題
金スンヒョンさん(米国在住)
■シアトル、ワシントン大学で日本の安保政策、海洋政策を学んでいる。
■事前の質問にあった「東学農民運動が2.8、3.1にどのように影響を与えたか」ということについての回答。当時は、世界各国が植民地を拡大するために躍起だった。東学農民運動に参加をしたソンビョンヒ(孫秉煕 )先生が、教育啓蒙が大切であると、東学を天道教に名前を変えた。さらに、1919年1月のパリ講和会議において、ウィルソン大統領の民族自決主義が影響を与えて、2.8独立宣言があったと考えられる。
■若者代表として2.8運動の意義を3つ考える。
1.北朝鮮問題、統一問題を前にした時、どういう器を準備するかが重要。自由、平等、個人の幸福追求の権利、人権と言った、私たちが重んじる概念を具体化して、器にし、それを持って北朝鮮の問題、統一の問題に接すべきではないか。
2.どのようにすれば、人権問題のアジェンダとしての重要度を上げられるか。また、人権問題政治ゲームのためのチップとして扱うことをなんとしても止めるべき。
3.南北間、北朝鮮との繋がりをどのように作るか。これまで脱北者の方に聞くところ、外部からの情報で脱北を決めた方が多い。政治的問題としてではなく、文化、宣伝物として具体的な方法を北朝鮮の内部の人たちとの繋がりをいかに持っていくか。北朝鮮に住んでいる人々の心を掴み、統一への原動力を維持する必要がある。
李ソクミンさん(日本在住)
■ 3年前、2.8独立宣言99周年にあたり、YMCAで宣言文を朗読した。日本にいる約2万人の留学生が2.8独立宣言の精神を学び、つなぎ、活動をしようという趣旨。水道橋YMCAで毎年式典が開かれている。
■白先生の動画を通し、2.8の意義と3つの特徴は非常に共感できる内容であった。
■正義と自由、世界の平和、政治のための自由という内容は、人類において、必要なことを平和的に訴えた内容だと思う。当時の留学生が植民地において、このような宣言を行ったことは非常に画期的。
■留学生から見た未来志向の日韓関係、対北朝鮮をどのように考えればいいか、というテーマについて考えてみる。
■まず、日韓の若い世代の交流。政治的イシューよりは、自分たちのニーズに合わせた消費があるのでは、と考える。ドラマや食事などの文化、若者がニーズに合うようなことに重要度、関心を置いているからではないか。
■日韓関係が現在と比べ比較的友好だった冷戦期には、日韓において国家のための安保を優先した妥協があった。しかし、冷戦終結後数十年がたち、人間の基本的権利である人権に焦点を当て、どのようにすればそれを解決することができるかを今は議論するべき。国際社会においてももっと真剣に議論されるべき。
■北朝鮮について。チラシ散布に代表される、北朝鮮への外部情報の流入方法については、方法論をよく考えることが必要なのではないか。南北国境付近の住民は、南北間の摩擦があった際に、直接被害を受けるのは自分たちである、と話している。
■修士課程において、国家関係における在外同胞の役割について研究していた。今まで韓国でも様々な運動があったが、海外において2.8独立宣言文のような行動が行われたということを、我々は忘れてはならないと思う。
■2.8独立宣言文102周年にあたり。北朝鮮との関係において、より現地のことを知っている人々によって活動が行われる必要があると考える。その地域のステークホルダー、本当に現地のことをよく知っている人によって、細かい方法論も考慮に入れるべきかと思う。
金ソンインさん(中国在住)
■この十数年で経済的に発展、物質的に豊かな生活になってきた。インターネットの発達で国境を超えて多くの方がつながる一方、偏った情報や根拠のない差別、偏見が起きている。
■2.8精神を学び、自分としてできること。国境を超えて同じ価値観を持つものが繋がり、平和な社会を作っていくために協調していくこと。国境をこえた市民を繋いで、草の根活動を広げていくことで、国家間対立のストッパーの役割となると思う。
■現在、そのための手段として、YouTubeを使い、中国の現地の様子を紹介している。日中の市民交流の場所として活用。
■宣言文から学んだこと。100年以上前に、武力行使ではなく、平和的に朝鮮半島を独立させ、日本と協調していく。共通の目的を掲げて、その未来に向かっていく。現代に向けたメッセージだと感じる。YouTubeを通して、そのビジョンを多くの人に伝えて行ければと思う。
質疑応答
■韓半島統一について日本人ができることはありますか?
―まずは心から協力する。資金や情報提供など、色々な協力の方法があると思うが、問題は心の問題だと思う。
―韓半島の統一問題は日本の安保にも深く関わっている。北朝鮮からの軍事事態が起きた場合、日本も他人事ではない。
一番大切なのは、日韓両国の関係改善、良好な関係を保つことが日本、韓国、地域の平和のためにも大切なことではないかと思う。
―北朝鮮の人権、ということに問題意識を持って行動する人の中には、一方的に自分の意見を主張する人がいる。そのような人の中に、若い人がなぜ人権問題などの問題に興味を持たないのか、という人がいるが、まさにそれが原因。今、行動をしている人が、その方法を考える必要がある。デモを出す、感情を一方的に吐き出すといった方法だけでなく、洗練された方法で、若い人が参加をすることができるように運動の方法を工夫する必要がある。
―一個人としてできることは、色々なことに関心を持つこと。料理などの文化に関心を持つこと。そこから色々な情報が派生的につながってくると思う。興味が広がっていく。自分が好きなこと、興味があること、日本国内、差別、排他的なこと、海外のことを興味を持つのが第一歩なのでは。中国、というキーワードはネット業界ではネガティブな発言が多い。3日に1回しか外出ができない。1ヶ月仕事も何もできない、という状況。YouTubeで発信をしていたことに対してアンチのコメントが結構あった。それは、ただ単純に知らないだけ。アプリを使って、どんどん海外の情報に接触していく状況は多くある。そのような情報が日本にない。いろんなことに興味を持っていく、という方法がいいのでは、と思う。
■2.8や3.1独立運動は、日本では反日運動で、朝鮮への投資があったことを理解していない、という意見があるが、そのような方々にどのように説明をしていくか。
―日本が戦後、GHQ、マッカーサーを代表とした連合最高司令部が来た際、日本の政治家がした際、直接的支配は避けたい、間接的統治という形を取るために尽力した。言い換えると、アメリカ軍令が直接日本を統治する、となった場合、それが戦後の日本社会に与える影響がどれだけ怖いものか、ということを経験として知っていた。
また、日本が植民地になったらどうなる、植民地はいいのでは、という答えをした。どのような意味を持っているのかは、開化主義、統治をしてよくやった。それならいいのでは、という話をしていたことを覚えている。
―日本が朝鮮半島に貢献したという意見は、植民地支配者していた側からの意見。朝鮮半島の人の視点に立ち、考えることが必要。
―支配する側とされる側、コントロールする側とされる側の意見、というのはそれぞれ聞く必要があると思う。日本が植民地支配した土地で工業、インフラ設備が発展したという例はあるとは思う。
台湾の実話を元にした連続ドラマで、台湾が舞台で、日本の統治が入ってきて、台湾の山に住む先住民族から見た角度のドラマがある。そのドラマの中で、開発を全くされていなかったところにインフラが整っていくが、自分たちの伝統的な生き方などは否定をされている、という内容がある。結果、不満が募り、蜂起につながっていくが、それをみたときに、日本により発展した側面と支配される側の側面、気持ちを知る必要があるのではないか、と思う。
―朝鮮半島統治の段階で、鉄道を作ったとすれば、その理由を考えなければならない、と思う。朝鮮に住んでいる人々のためのものであったのか、それとも、自分たちの利益のためであったのではないか、ということに答えずに、今の質問に答えるのは難しい。
■白栒博士への質問
2.8宣言について、最初に白栒博士は、それが自由思想、民主主義思想に深く結びついた独立思想・民族意識であると説明して下さったと思うのですが、その精神からすると、
(1) 現在の香港の状況はどう見ればいいでしょうか。香港の人々は今まで、イギリスによる植民地支配のころから享受してきた自由を守りたいという意識があると思い、中国とは異なり続けているでしょうが、それは大陸中国の権力のみならず、大陸中国の相当多数の中国人大衆とも考えが対立することになるでしょう。民族思想と民主主義とが矛盾する例だと思います。
(2)似たような構造の問題は現在の朝鮮半島にもあると私には思われます。韓国の現在の文在寅政権の北朝鮮寄りの姿勢は, 2.8宣言、3.1宣言を尊重する韓民族はどう評価されますか? 民族の統一を意識するとしても、自由を民主主義とを全然評価しない相手との統一や協調に文在寅大統領が強い抵抗を感じないなら、それは2.8宣言に反するように思われます。
回答
2.8運動は民主主義を内容とした民族主義運動でした。
民族主義と民主主義は、その根本的な哲学において、違う主義です。民族主義は、統治の基準と単位を民族に置く主義だとすれば、民主主義はその価値を個人の自由に置いて全国民またはその選出された代表者によって統治をする主義です。
したがって、民族主義は、民主主義を内容とする主義、つまり民族主義と民主主義は双子の兄弟として展開される場合に2.8運動の現代的な意義があるのです。
(1)民族主義は、歴史的生命体(民族自決主義)として自由と正義を内容とする民主主義を一緒に目指す際に、その現代的意義があるのです。これが民族主義の建設的方向です。
ところが、歴史的に民族主義は集団主義的、自民族中心主義的、そして専制主義的に活用する破壊方向に進む傾向があることを歴史は語っています。現在、香港を除く中国本土の民族主義は共産党を最高権力統治機構とする専制主義体制である権威主義(Authoritarianism)になります。中国本土での民族主義は、香港の人々が渇望する民主主義を価値基準とした民族主義ではないのです。
(2)同じ論理を現韓国政府の南北統一政策に適用することができるでしょう。
つまり、朝鮮半島の統一は自由と人権をベースにした民主主義の価値を内容によるものによってのみの韓国民族の統一でなければならないという論理です。現韓国政府の民主主義の価値を後においた南北の民族統一と協調は2.8運動の根本精神と現代的意義に適合しない政策だと思われます。