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アクション・フォー・コリア・ユナイテッド

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オンラインセミナー「北朝鮮エリートの視角と経験」~祖国の民主化と平和統一を目指して~ 講師:李炫昇(リ・ヒョンスン)氏を実施しました

2020/10/13

 9月26日に脱北者であり、現在は米国在住の北朝鮮関連コンサルタントの李ヒョンスン氏(34)を招き、「北朝鮮エリートの視角と経験」というテーマでオンラインセミナーを開催。当日は80名近くの参加者が集まる中、北朝鮮でエリートとして育ち、経験してきた様々な北朝鮮内部の実情や、李氏自身と家族が脱北に至った背景などを語りました。

 李氏は主に、

1.自身の家族が亡命した動機と背景
2.北朝鮮エリートの一人として生きてきた背景と経験
3.北朝鮮のエリートたちの日本、韓国、米国、中国に対する視角
4.有名ドラマ「愛の不時着」に対する李氏自身の考えと、朝鮮半島の統一のための北朝鮮のエリートたちの視角

 について語りました。

 多くの内容の中から、要点を抜粋します。

李氏の家族が亡命した動機と背景
■2014年10月、名誉、権力、富など全てを捨て亡命。容易ではない決断だったが、自由を求めて北朝鮮を去る。幸いなことに父が北朝鮮で特別な地位にあり家族が中国に居住していたため亡命の決断や過程がより自由だった。
■李氏の父(李正浩氏)は、約30年間、北朝鮮の朝鮮労働党39号室で上級職経済官僚として勤務。 その間北朝鮮の次官級に匹敵する地位を二回ほど務める。国に献身した功労で、北朝鮮の最高の栄誉である「努力英雄」の勲章とメダルも受けた。北朝鮮の経済発展のための政策を作り、中国での活動では、北朝鮮への大々的な投資を引き出す。
■国への献身したことにより北朝鮮のエリート層から多くの信頼と尊敬を受けたが、亡命を決断。理由は金正恩の残虐非道な処刑と粛清が理由。叔父の張成沢を始め、約500人にも及ぶ人を粛清。政治犯収容所に送られた彼らの家族や親戚まで合わせれば、1万人を超える人々が処罰を受けた。
■その後も1年近く粛清が続く。金正恩執権の6年間に殺された多くのエリートたちは、金正恩が生まれるずっと以前から、北朝鮮という国に献身して功績がある人々だった。

北朝鮮エリートの一人として生きてきた背景と経験
■1985年に元山という海沿いの都市で生まれる。非常に美しい都市で。金正恩も子供の頃のほとんどを元山(ウォンサン)で過ごす。金正恩は現在、元山を世界的な観光都市にしようと、国家の多くのリソースを投資中。
■元山で5歳まで過ごし、平壌に引っ越す。その後、北朝鮮の学生としては最高のエリートコースを歩む。小学校では最高のアーティストやミュージシャンを養成する金星学院(金正恩の妻の李雪主は金星学院で声楽を学んだ)、中高等学校も、最高級の平壌外国語学院で英語を学ぶ。
■北朝鮮は、社会的正義と平等、人民大衆のための社会という理念で作られた国であるにもかかわらず、社会的に根本的な違いを持っている社会であり、政権が外国に宣伝する社会と実際の北朝鮮は非常に違う社会である。
■17歳で軍に入隊。入隊初日、除隊直前の2人の兵士の右手のうち2本の指がなかった。後にわかったが、彼らは自分で自分の指を2本切り落とした。軍の規定で指が2本以上ない場合は、自動的に除隊になると言う規定があるが、自分で指を切り落としてでも軍をやめるほど過酷な状況にある。
■3年3ヶ月の軍服務を終え、労働党員となる。その後、平壌外国語大学に進学。大学入学の3ヶ月後、中国に留学。そこで、私に多くの認識の変化が生じる。
■中国留学時代、最初に印象に残ったのは、学生が自分の聞きたい科目を選択することができる、と言うこと。北朝鮮の教育は、すべてが国が決めた資料と教材で授業が行われるため、科目を選択することができない。三権分立の概念がなく、あらゆることにおいて、選択ができるという考えを持つこと自体ない。
■中国でニュースや多くの情報に接しながら3年、認識に変化が訪れる。北朝鮮政権の行う宣伝が虚偽であることを理解する。
■大学院に通いながら、中朝貿易に関与。中国人に「なぜ北朝鮮は改革開放をしないのか」と言われる度、答えに窮した。北朝鮮にはその答えがどこにもなかった。
■中朝貿易を通し開放政策を広げた張成沢を始め、多くの人々を金正恩は粛清。多くの市場開放政策を金正恩が全て撤廃し、北朝鮮の経済的希望を抹殺。

北朝鮮のエリートたちの日本、韓国、米国、中国に対する視角
■第一に中国について。中国と北朝鮮が非常に密接な関係にあり、中国が北朝鮮に多くの影響力を行使することができるという国際社会の認識は誤り。
■張成沢の処刑以前まで北朝鮮のエリートたちは、中国とのビジネスを多くしながら好感度が高く、エリートたちの中に親中の機運があった。
■金正恩は反中姿勢が非常に強い。理由として、30年間の改革開放に対する圧力と、北朝鮮からの軍事的挑発や核実験に対する反対意思。現在の外交関係をみると、中国の高位級外交、軍事、経済使節との交流がほとんどない。
■第二に日本とアメリカについて。日本とアメリカを百年の宿敵だと宣伝する反面、実質的には、日本とアメリカに非常に憧れている。彼らは韓国と中国の経済発展の過程で、日本の技術と資本の投資が多くあったことを知っており、北朝鮮も開放されれば、日本との協力を期待している。
■米国に対しても非常に幻想的に考えている。彼らは、韓国が米国の保護下で経済成長するのを見てきて、米国との外交関係樹立が北朝鮮にもたらす効果をよく知っている。また、米国が朝鮮半島問題の解決の決定権を持っていると認識しており、アメリカの経済力、軍事力、技術力について米国が世界No. 1であることを信じている。
■第三に韓国について。北朝鮮政権は、民族同士の統一、民族同士の平和を成し遂げなければならないと宣伝するが、実際は真逆。金一族政権の最大の敵は韓国。それは1950年の朝鮮戦争の時から変わらない。現在でも北朝鮮の人々が海外韓国人と接触すると厳重に処罰される。
■統一後は韓国が北朝鮮に投資し、韓国が北朝鮮をコントロールすると考える韓国の予想は非常に大きな誤算。エリートたちは、もし北朝鮮が経済開放をすれば、韓国からの投資は、夢にも見ておらず、米国の資本、日本の技術、中国の市場を考えている。また、北朝鮮のエリートたちは、韓国の左派政権を非常に嫌う。理由は韓国の左派政権の平和協力のために死んだ北朝鮮のエリートたちがかなり多いから。

「愛の不時着」に対する李氏の分析
■最大限北朝鮮の現実を反映し、南と北の和合を図ろうと意図されたドラマだと思う。
■このドラマが北朝鮮の軍人たちを美化していると言うある韓国人がいたが、李氏は少し違う見方を持つ。北朝鮮の軍人たちも感情を持つ人であること、彼らが受けた教育・命令が間違っており、彼らも韓国人に会えば話も通じ、同じ民族という感情を感じる。
■問題は北朝鮮の政権とリーダーシップ、システム。一般的な北朝鮮の住民が悪い人ではない。多くの良い情報と知識によって判断力と思考力が良くなり、北朝鮮政権が悪魔の政権だということを理解するようになるだろう。
■最も印象深いポイントは、南北の生活を比較して示したこと。一方は刑務所のように独裁、全体主義体制の下、自由と権利がない生活。もう一方は、自由、平和な世界、自助努力によりお金も儲けることができ、監視も受けない場所である。北朝鮮の住民にはこのように、北朝鮮と他の世界を比較することができる情報が必要。

朝鮮半島の統一のための北朝鮮のエリートたちの視角
―統一はどのように成されるか
■北朝鮮のエリートたちは韓国主導の統一を望まず、韓国の勝者独占統一には反対。韓国が膨大な資本と経済力で、北朝鮮のすべての利益と資源を占めることを望まない。
■エリートは北朝鮮が開放され、北朝鮮の人々も経済的に豊かになり、文化的素養も高まり、知識も備えた後に統一がされてこそ、公正で平和な統一が成されると信じている。
■李氏の統一に関する理解。平壌からソウルに何の制限もなく、お互いに行き来することができる。別れた家族が心置きなく会うことができる。南北の若者が結婚できる。政府の制御なしで通信できる。このようなことが統一であると思う。
■朝鮮半島政権の主導権は、北朝鮮や韓国がどのような制度を選択して、どのような原則を守るかが重要。自由民主主義、市場経済、人類の普遍的価値を保証する制度が一番良い制度であり、共産主義、社会主義を選択すべきではない。
■韓国の左派政権は南北協力のアプローチにおいて非常に愚かなことをしている。太陽政策のように対話による協力は金一族政権と北朝鮮の内部政策を知らない発想。
■対話、協力とは、共通の意思、システムで共同の利益があってこそ実現されるが、現在、北と南で共有できる政治・経済システムはない。
■いかなる韓国の政権も北朝鮮を安価な労働力、低価格資源、韓国の経済成長を成し遂げるための足場としてだけ見れば、平和的な統一は成すことができない。統一を北朝鮮の住民たちが自ら発展し、成長する機会となるようにしてこそ、平和的であり協力的な統一となる。

質疑応答(一部抜粋)
■情報が閉ざされた北朝鮮の人たちに情報を伝える一番いい方法は?
→軍用のステルス爆撃機、ドローンなどで平壌の上空から全ての権力機関に情報の雨を降らせる。USB、紙の媒体、小型ラジオ、など大量にばらまき、外の情報を知らせる。北朝鮮の一般人民が外の情報を入手する方法は限られており、軍事的手段の使用が効果的。

■正しい情報に基づいて人民が民主化のために蜂起する可能性はあるか。
→北朝鮮では人民が立ち上がれないシステムになっている。同時に40~50の統制の下にあって、人々が集まって何かをする、という空間がない。
私が情報を先ほど言った方法(軍用機などによるばらまき)で送ると言った理由は、エリートたちに情報を送ることによって、北朝鮮人民側に立った決定をできるようにするため。

■11月の大統領選の結果によって、北朝鮮はどう出てくるか。
→緊張、対話、支援の獲得と言うこれまでと同じパターンを繰り返すのでは。過去20~30年、韓国、アメリカの政権が変わるたびに繰り返してきた。

■平壌の市民、エリートたちは北朝鮮の成り立ちと背景についてどのような理解を持っているのか。

→北朝鮮の市民、平壌の市民といえども、与えられる材料は当局から与えられるものだけ。外の情報に接した場合に限り、外部に対する認識を持つことができる。海外で少なくとも3年以上暮らした経験がある人でないと、北朝鮮が間違った国であるという認識を持つことはできない。

■中国での経験や暮らし、アメリカでの生活をし、そこから見た北朝鮮や、他の国が北朝鮮を見る視点について気づいたことは。
→驚いたのは、北朝鮮において韓国は敵であったが、韓国は平和に交流するべき相手としておおらかに見ており、その誤認についてショックを受けた。アメリカでは人類の普遍的価値、自由、ということを学び、アメリカの人たちが世界をどう見ているのか、北朝鮮をどう見ているのか、ということを知り、北朝鮮、韓国にいた時も非常に視野が狭かったな、ということを感じた。