一般社団法人
アクション・フォー・コリア・ユナイテッド

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オンラインセミナー「脱北YouTuberキムが語る北朝鮮」を開催しました(全3回のうち3回目)

2023/02/03



前々回からキム・ヨセフさんのオンラインセミナーの内容を掲載しています。
前回はキム・ヨセフさんが脱北に成功するまでの経緯を紹介しました。

■北朝鮮では想像ができない「自由」
一番いいことは、やはり自由があるということです。脱北して一番大きなものといえば、北朝鮮では想像すらできないことができることです。北朝鮮では自分の住んでいる地域から少し離れることでさえ政府の許可が必要ですし、音楽も、映画も、全て政府の許可なしでやってはいけないことが、韓国では何の制限もありません。行きたければ、お金さえあればどこの国にでも自由に行けます。それが一番脱北できて良かったことなんですね。

それと、当然働いたら働いた分の給料が入ってきます。それが北朝鮮では、僕がずっと十代の頃に働いて、一日働いてその次の一日を生活できる分のお金をもらって、それが毎日ずっと続いていました。韓国で働いたら、使い方にもよりますが、真面目に頑張って生活すれば、十分な貯金もできるということが、すごく僕にとっては夢の国のような世界でした。

ただ先ほどお話した通り、結構、同じ民族で同じ言語でも価値観も違うし、生きてきた文化や習慣も違います。脱北者の中でもいろんなトラブルが起きたり、人や社会にうまく溶け込めずに生活する人もいれば、ちゃんと一生懸命生活をして、数年経てば自分のお店をやったりする人もいます。

人それぞれですが、やはりそれだけ資本主義と社会主義との違いや、民主主義と独裁の違いもあり、何か洗脳されて生きてきた人たちから見たら、なかなか理解できないところもあります。そういう葛藤の中で、今も三万人くらいの脱北者が韓国社会で生活しています。

僕も韓国に来て、とりあえず2年くらいはすごく一生懸命に会社員として働き、給料をもらったら貯金しながら、それが一番最初に、韓国ですごく楽しいことだったんですね。

子どもの頃はお金がなくて、腹いっぱい食べたくても食べられなかったというのがありました。それで学校にも行けなかったのですが、韓国に来て、とりあえず働いて自分が働いた分の給料が入って、それで貯金ができて、口座に少しずつお金が貯まるのがすごく楽しくて。

■せっかく得た自由を満喫できるような何か
それで2年くらいはすごく頑張って働いたのですが、2年くらい暮らしてみて、25〜26歳くらいになっていました。その時、本当にこのままでいいかどうか、せっかく自由な社会に来て、自分でせっかく得た自由ですから、その自由を満喫できるような何かをしたいというのがありました。

それまでは勉強とかは考えずに、とりあえずお金さえあれば、この資本主義社会でなんとかなるでしょうという感覚だったのですが、二年後に気づいたらちょっと勉強も必要だと思いました。この社会についてもっと知らなければいけないということで、働きながら勉強して、韓国で中学校卒業の資格を得て、高校卒業資格にもチャレンジしました。しかしやはり一人の勉強ではちょっと難しかったので、仕事を辞めて一回学校に行って勉強して、それで高校卒業資格も取れました。

ちょうどその頃、韓国で詐欺に巻き込まれたことがありました。両親が、知り合いから「こういうところに投資したらかなり儲かる」という誘いがあったらしく、僕が貯金したお金も一緒に入れたのですが、結局は詐欺で、お金を回収できませんでした。それがきっかけで二年務めた会社を辞めて、高校卒業認定試験にチャレンジして合格しました。当時、自分なりにこの社会で生きるのに必要なことは何かと考えていました。

■子どもの頃からの、日本への思い
僕が子どもの頃、北朝鮮に住んでいる時に、僕の周りに在日の人が結構多くいました。昔、結構「帰国事業」で日本から北朝鮮に渡った人たちが多かったんですけど、その中の一部が僕が住んでいた地域に多くいました。子どもの頃にそういう人たちと交流をする中で、日本という国にすごく興味が湧いてきていました。

それと日本に興味が湧いてきたもう一つの理由は、その当時、北朝鮮に日本製の中古製品が多くありました。自転車や、家電製品も多くあって、中古であれ何であれ、日本製の物を使うということは、北朝鮮では一つのステータスでした。すごくお金持ちという印象で、一般人には手が届かないほど高値で取引されていました。

そのように、子どもの頃にすごく日本という国に興味があったので、韓国に来てちょうど四年くらいになる頃に、一度日本に行ってみたいと思うようになりました。長く住むかは別として、とりあえず日本に行って生活してみたいということです。それで一年くらいは日本語を勉強しながら、日本で生活してみたいという目的で、最初に日本に来ることになりました。

■祖父が言っていた通りの日本
日本に来て最初に驚いたのは、北朝鮮の町の中で走っていた自転車が本当に多くて、そのことにまず、すごく驚きました。北朝鮮で走ってたのと同じ形の自転車で、日本で使っていた自転車が北朝鮮に来たということを実感しました。

また、日本で一年くらい生活していて一番印象に残ったことがあります。昔、僕の祖父が日本軍として従軍したことがあったり、日本人に雇われて働いたこともあって、子どもの頃に祖父から聞いた話がありました。それは、「日本人はすごく真面目で、ちゃんと信用を守る」ということでした。

日本に来て実際に生活すると、僕から見て、日本人は本当に真面目で人との礼儀を正しくするとか、すごく信用を守るという祖父から聞いた話が、自分が実際に見て生活していく中で、本当にそのまま、祖父から聞いた話は本当にそうだったと、すごく実感しました。

■日本に魅力を感じ、敢えて日本の大学でチャレンジ
それで最初はちょっと一年くらい、とりあえず日本とはどんな国なのだろうと思って、一年間だけ日本語を勉強しながら生活してみたいというのが、最初の目的でした。しかし、そのうちどんどん興味が湧いてきて、ちょうど韓国に帰るかどうかという時に、日本の社会とか、日本についてもっと知りたいということで、日本の大学に進学することにしました。

その時、埼玉にある私立大学に進学して政治経済学を学びました。実は韓国にいれば、脱北者はすごく手厚い支援をもらえます。住宅支援とか就職支援とかもありますし、学費もほとんど無料ですし、国が支援してくれます。本当は大学に行くのであれば韓国の方がすごく 楽だったのですが、僕はその楽よりは「日本でもっとチャレンジしたい」という気持ちが強くありました。

日本まで来てもっとチャレンジするんだったら、もう日本でずっと大学生活を送りたいということで、それで4年間、大学を卒業ができて、就活を終えて、日本のある製造メーカーに就職ができました。

■情報発信のきっかけは『愛の不時着』
ちょうど一年くらい働いた頃、日本で『愛の不時着』という韓国ドラマがすごく流行っていました。当時、僕はドラマには興味がなかったのですが、テレビやネットのニュースで見ると、すごく『愛の不時着』がニュースにでていました。しかも、その背景が北朝鮮だということでちょっと興味が湧いてきて、見たらそういうドラマでした。

それで何がそんなに人気なのかをちょっと調べてみたら、『愛の不時着』の主人公の北朝鮮の将校がすごくかっこよくて、みんな「あのドラマの主人公に会いに北朝鮮に行きたい」とか、そういう人がかなり多くいました。

実際の北朝鮮とドラマの北朝鮮はあまりにも違うのに、なんかそのドラマのような世界を夢見てるような人たちが、何も知らずに北朝鮮に行きたいというので、「いや、僕から見たらそのドラマと全然違う世界ですよ」というのを伝えたく思いました。

それで自分が経験した北朝鮮のことを伝えるために、2020年の年末から『脱北者が語る北朝鮮』というYouTubeチャンネルを開設しました。このセミナーのタイトル通り、「脱北者YouTuberキムのストーリー」というような感じで、今、2年くらいになっていますが、YouTubeを始めて2年の間でも、すごくありがたい事に多くの方がチャンネル登録をしていただき、現在10万人くらいになっています。

■代価を払って得た今の生活への感謝
ということで、僕が北朝鮮で生活したのは23年でした。23年間北朝鮮で暮らしをして2008年に脱北し、2009年から2013年まで4年間韓国で生活をして、2013年から現在まで9年くらい日本で 生活しています。

北朝鮮社会を離れて今、12年〜13 年くらいになりますが、いろいろ北朝鮮にいたら経験できないような、本当にいろんなことを僕は経験できて、今、本当にここまで来れてたくさんの人と会えて、自分の中ではすごく今の生活に感謝しています。

皆さんから見たら普通に生まれた時から与えられている当たり前のことが、ずっと僕にとっては 当たり前じゃなくて、多くの代価を払って得たものです。だからこそ、すごく今の生活を大切にしたいと思っています。

■この空の下、日本人ほど恵まれた人は、そんなに多くない
この社会に生まれた多くの人に、今この社会で生きる中で行き詰まった人もいるし、幸せの人もいれば不幸だと感じる人も少なからずいますが、同じ空の下で、この21世紀に日本人ほど恵まれた人も、この世にそんなに多くはありません。

ここからちょっと離れた、数百キロほど離れた北朝鮮では、今本当に食べ物に困って、今年はコロナも流行って、もうどれくらいの人が亡くなったかわかりません。北朝鮮では「第二の苦難の行軍」というほど、今、経済事情が厳しいという情報も聞いています。そういう中で こういう自分の経験を、このセミナー、あるいは僕のYouTubeでたくさんの人に伝えることができたことも、すごく感謝しております。

以上となります。ありがとうございます。

■質疑応答
Q.同じ境遇にいる脱北者同士の交流・相談はありますか?
僕は韓国にいる時はハナ院というところがあって、一緒に韓国に入国して卒業する、そのハナ院の卒業生同士がいるのですが、韓国にいる時は交流がありましたが、今は日本に来て韓国とは離れたところで生活している中で、特にそれほど交流というのはないですね。たまに連絡する友達はいますが、そんなに交流というのは今のところ。

Q.現在、キム・ヨセフさんは、自由に発言できますか?それともいろいろな事情があり、本当のことがなかなか言えない状況にありますか?
僕は自由にできていると思います。もちろん自分が言いたいことすべてを言えるかと言えば、その中でも言えないところもありますが、基本的には特に制限はなく、自分の発信したいことは一応発信でき ています。

Q.北朝鮮の独裁者である金一族から様々な圧力をかけられながら、北朝鮮で暮らして、その中でも日本で暮らす夢・目標を実現させて、今は日本で信頼できる、心ある仲間の方々と一緒に日本で暮らしていらっしゃいますが、北朝鮮の暮らしで独裁者から与えられた洗脳・トラウマをどのように乗り越えて克服したのでしょうか?
北朝鮮という社会は、僕から見たら全て嘘というか、自分たちの政権に都合のいいようなことしか国民には言っていないし、「外の世界はすべて人間が生きるような社会じゃない」とか、ずっと子どもの頃から教えています。北朝鮮を離れて北朝鮮以外の社会で見て聞いて感じたのは、それが全て嘘だったというのを実感しました。なので、北朝鮮で23年間経験したものの中で、自分の子どもの頃からの、人間として生きる努力とか粘りとか、強く生きる、そういうのは確かに今もあります。しかし北朝鮮で教わったこととかその社会でも身についたものは、今この社会に何一つ役に立つものもありません。韓国に来てそれが分かった時点で、その社会から学んだことというのは全て、そこから全て切り替えて、今必要なものをどんどん 吸収してきたということが、おそらくその社会で洗脳から抜け出した一番の要因ではないかと個人的には思っています。

Q.北朝鮮にいた頃、キム・ヨセフさん自身や周囲 の人々が北朝鮮の外の情報に触れる機会や方法があるとすればどんなものでしょうか?
今は韓国のドラマとかすごく流行って、それで色々な情報が入ってきます。僕がいる頃も、一部の人は韓国のドラマを見たり、それで少し北朝鮮以外の国を間接的に経験することはできましたが、僕は特にそういうのはありませんでした。

唯一経験できるのは、僕が住んでいた地域は国境から離れたところで、北朝鮮は日本のように国内でも自由に移動ができないので、ちょっと離れた地域でも情報が回って来ません。ただ、中国との国境地域では、密輸入とかが多いので、割とそういう情報が回っています。それで海外の情報といえば、ブローカー、あるいは一回脱北経験のある人、あるいは密輸入する人の経由で、色々な情報が入ったりします。

ですから、そういう人たち経由で海外の映画とかドラマとかで、少し北朝鮮と違う社会を見ることができるんじゃないかなと思います。今は金正恩になって厳しくなっているのですが、国境地域に限っては、脱北している人と、北朝鮮に残されてる親戚たちも、電話で連絡を取れて、それで韓国とか北朝鮮以外の社会の情報が、北朝鮮に入っているみたいですね。

Q.金正日氏や金正恩氏に対して国民の本音はどんなものでしょうか?完全に教育されていて不満はないのでしょうか?それとも不満を持っているのでしょうか?
北朝鮮は連座制もあるし、この21世紀では想像できないくらい閉鎖的な社会です。誰も気軽に政権に対する不満を言えないような社会構造になっています。この人は金正恩を支持してるとか、この人は金正恩を支持しないとか、わからないですね。日本のように政権の支持率が何パーセントとかいうような、世論調査もありません。

僕の感覚的なものになりますが、おそらく、もし政権が「もう何もしないから、あなたの行きたいところに行け」と言うのであれば、おそらくですが、7〜8割以上の人は北朝鮮を離れているかも知れません。つまりそのままの、金王朝体制での北朝鮮では生きたくないという人が、多いんじゃないかと思います。

残りの2〜3割くらいの人は、洗脳からまだ解けてない、あるいはまだその社会のことが正しいと思う人がいるのではないかと思います。その根拠としては、北朝鮮のメディアでよく朝鮮中央テレビで金正恩が登場すると、すごく泣いたりするというのは、まあ、それは嘘ではないと思うんですね。

本当に金正恩のこと、金一族のことをすごく尊敬する人もいるかもしれないし、その割合が正確に何割というのはちょっと言えませんが、だいたい先ほどお話した通り7〜8割は多分支持していないのではないかと思います。

Q.キム・ヨセフさんは脱北ユーチューバーとして日本人向けに北朝鮮の情報を発信してくださっています。北朝鮮問題の解決のために日本の視聴者に願うことはありますか?
一応北朝鮮は国連に加入して、正式に一つの主権国家として認めてもらってるわけですから、政治的に何かを言うのは、内政干渉にはなりますが、ただ、日本人の一人ひとりにお伝えしたいのは、北朝鮮の人権っていうのは本当にこの21世紀には想像ができないくらい、本当に悲惨な状況です。保衛部に捕まって2ヶ月くらい生活しましたが、人間とは思えないくらいの扱いをされて、政権に背いた反逆者とか、政治家とかだと、もうかなりひどい扱いをされる、そんな国です。

その中に住んでいる国民自体も、人権というものも知りません。海外の基準で言えば、もう完全に人が生きるような社会ではないのですが、北朝鮮人だからということではなく、この21世紀に生きている一人の人間として、そこに、そのような環境の生活を強いられている人たちが2000万人くらい生きています。そういうことを皆さんにすごく、北朝鮮と人権とか、そこに暮らしている人たちの生活に、関心を持っていただきたいというのが、僕から皆さんに伝えたいことです。

本当に映画の世界ではなく現実社会が、北朝鮮という朝鮮半島の北の方に、そのような生活をしていて、そこに自由というものは何一つない生活をしている人が、かなり多くいるということは、皆さんに、本当に知ってほしいところです。

Q.統一コリア実現に向けて、国として個人として、日本からできることは何でしょうか。脱北者のキム・ヨセフさんの立場で考えておられることがあれば教えてください。
先ほどお伝えした通り、北朝鮮は国連の加盟国であり、一応世界的に一つの主権国家として認定されてる国ではあるのですが、まさに今、ウクライナの戦争で、ロシアが攻めていて、そういう戦争が起きています。ウクライナの民主主義を支援している国が、今たくさんあります。東アジアで、中国もそうですしロシアもそうですし、北朝鮮も同じ仲間という独裁国家で全体主義国ではあります。

統一に際しては、朝鮮半島が一つになるために、北朝鮮による一つの国になるか、それとも韓国による民主主義による統一になるか、というどちらかになると思います。韓国による一つのコリアになるためには、日本とか自由民主主義の価値観を共有する国の役割は本当に必要になっ てきます。

なので、今本当に韓国と日本の間では、歴史問題でいろいろ感情的になってマイナス的に考えることが多いですが、大きく見ると南北統一は日本にとってデメリットより、メリットが大きいと僕は個人的に考えています。

というのは、全体主義に対する自由民主主義の同盟というか、そういう意味では北朝鮮がいつかなくなって、韓国による一つの朝鮮半島になった方が、日本にとっても、この先中国との対立も考えたら、もっとメリットがあると思います。それに対して日本人の一人一人がそのような認識を持っていくというも大事だと思うし、日本国政府もそのような朝鮮半島の統一に向けて、そのような協力的な姿勢を持つのも、重要なことではないかと僕は考えています。

Q.キム・ヨセフさんの日本語は素晴らしいです。貴重なお話をありがとうございます。日本で9年、韓国で4年とのことですが、一概に言えないと思いますが、どちらが生活しやすいと感じますか?
「生活しやすい・しにくい」というのは、個人個人によって、その社会が自分に合うか合わないか、考え方や習慣が合うか合わないかなど、違ってくると 思います。もちろんどの社会も問題点もあればいいところもあるし、それは北朝鮮のような本当に無茶苦茶な国以外では、そこまで違いはないと思います。

ただ個人的には、僕はちょっと日本人の人に対する思いやりとか、そういうのが好きで、最初は一年くらい予定したのが、今はもう9年も日本に住んでいます。そういったところで自分に合うか合わないかって、特に韓国と日本でそこまでもう経済の豊かさといえばそこまで差がないというくらいなので、僕はもう韓国にいたから必ず生活しやすいとか、日本にいるから生活しにくいって いうのは、ないと思うんですね。

言語的な問題があって、日本にいると僕のような朝鮮半島の出身者にすれば新しい言語を学ばないといけないし、その社会に溶け込まないといけないようなもあります。だからこそ僕は日本に来て学んだからこそ、この世界や物事を見る視野が広がったと思います。日本に来て色々なことを勉強できたのは、大変感謝してるところでもあります。なので、答えとしては、どこが住みやすい・住みにくいっていうのは個人的にはないのかなと思います。

Q.常に自分の幸せや自分の周りの人の幸せを思い、世界を愛して良くしたいという気持ちがどんどん出てくる、使命感があるキム・ヨセフさんの心の豊かさはどこから出てくるのでしょうか?
心の豊かさというか。そうですね。まず、日本でなかなか経験できないことを、僕は北朝鮮で経験してきてて、その経験値というのが、幅が広いということで、おそらくすごく悲しんでる人、あるいは今すごく辛い思いをしている方など、共感できるところが個人的にあると思っています。

僕は確かに日本では想像ができないことを経験してきましたが、意外と外から見たらすごく豊かに見えるこの社会にも、不幸を感じている人が多くいます。だから少しでも、何かに行き詰まった人たちに、自分の経験を通して、あなたは不幸ではない、今、それよりもっと不幸な辛いことを経験してる人が多いと、だから今あなたは恵まれているということを伝えたいです。また、そこから少しでも自分の人生を豊かに送ってもらいたいという、それがあって、なんとなくですが、人々にそのようなイメージで伝わっていったのではないかなと思っています。

Q.北朝鮮はいつまでも続く国家だと思いますか?それともどこかで限界が来ると思いますか?
いつまで続くかというのは、もう神様しか知らないと思いますが、ただ言えるのは、おそらく3代目で終わるんじゃないかと思います。金正恩は僕とそんなに年齢が変わらないのですが、あんなにも食べ過ぎて、でかい体で、何かの治療とかもあるように見えるし、4代目まで北朝鮮が続くかというと、個人的にはそうは思わないですね。

もしかしたら明日、クーデターか何かが起きるかもしれないし、急に金正恩が亡くなって、次のリーダーに変わるかもしれないし 。とりあえず金一族が終われば、北朝鮮に今より悪い方向で変化が起きる可能性は少ないと思います。

Q.キム・ヨセフさんにとって「自由」とは何でしょうか?
実はYouTubeで自由というのを今年の1月から自分なりの自由ということをまとめて、動画で発信しようと準備はしていたのですが、今はまだできていません。先ほど僕が脱北して得たものの中で、一番大きなことといえば、「自由」ということです。

日本で生まれた人から見たら、別にそれが恵まれたことでもなく、当たり前すぎて、そこまで深く考えないもの、それができることが自由なんですね。

自分が韓国籍であり、韓国の政治家に対して、「その人はちょっと間違えてる」とか、そのような政治批判ができることや、まさにYouTubeで自分の経験を自由に発信できる、人を批判したり何か迷惑をかけない限り、何でもできることとか。

北朝鮮にいたならば日本に行くことなど、想像もできません。本当に生きてる間に、この海の向こうの日本に、日本ってどんな社会だろうとずっと思っていても、なかなか経験できない国まで来れました。

同じ韓国語を使う朝鮮民族とは違う文化圏と、その言語を学んで、これだけ多くの人と交流ができて、いろんなことを経験できる、それこそ自由です。

お金と時間さえあれば、どこにでも行けるような、それも僕にとってはすごく大きなことです。それは北朝鮮ではなかなか想像ができないことであり、本当に自分が何でもできる。それが僕にとっての「自由」ですね。

■最後に…
1時間以上長い時間、たくさんの方が僕の話を聞いていただき、本当にありがとうございます。
僕は生まれが北朝鮮であって、たまたまそこに生まれただけで、ちょっと皆さんとは違う社会を経験して、今はここ日本に来れました。

ただ、国籍とか出身がどこというより、普通にこの世に生まれた人間として生きるとき、何が一番大事なのかということであり、北朝鮮人だからというより、今この同じ空の下で生きてる一人の人間として、僕はたまたま運が良くてここ日本に、脱北ができて韓国と日本社会を経験しているわけです。

皆さんにとっては何気ない、この普通の日常ですが、こんなことが経験できない、北朝鮮のたくさんの人々が、いつかまた僕のような生活ができる日が来ることを、僕も願っております。

日本の一般のたくさんの方が、北朝鮮の国民に対して少しでも関心を持っていただければ、すごくありがたいなと思っています。本日はありがとうございました。

【キムさんのYoutubeチャンネル】
https://www.youtube.com/@yosehu-kim
https://www.youtube.com/@josephkim7066